アスベストの見分け方とは?ロック・グラスウールとの違いも解説
アスベストは吸音性や断熱性、耐火性に優れた鉱物で、建材として広く使われてきました。しかし、繊維が非常に細かいため飛散しすく、吸入すると肺がんや悪性中皮腫など重大な健康被害を引き起こすおそれがあります。そのため、建物にアスベストが使われていないか気になる人は多いでしょう。そこで本記事では、アスベストの見分け方を解説します。
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アスベストと似ている素材と見分け方
建築現場で使用される素材には、見た目が似ているため混同されがちなものが存在します。特にロックウールとグラスウールは、アスベストと見た目だけでなく使用目的も似ているため、間違われることが多いです。ロックウールとグラスウールの特徴とアスベストとの見分け方を解説します。
ロックウールとは
ロックウールとは、鉄を生産する際に発生する「高炉スラグ」や玄武岩などの天然岩石を原料とした人造鉱物繊維です。不燃性、断熱性、耐水性、耐湿性、吸音・遮音性に優れています。また、健康被害因子となるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)をほとんど発生させないため、安心・安全な素材と言えるでしょう。
グラスウールとは
グラスウールとは、ガラスを主原料とした人造繊維を指します。断熱性、不燃性、吸音性に優れ、人体に無害であることから、住宅用断熱材や空調ダクト、保温・保冷材として幅広く使われています。また、グラスウールの原料となるガラスは建築現場や家庭から回収された資源ゴミから作られるリサイクルガラスであり、グラスウールも再利用が可能なので、環境に優しい素材です。
アスベスト・ロックウール・グラスウールの見分け方
アスベストとロックウール、グラスウールは見た目が非常に似ており、目視で判別するのは困難です。迷った際の見分け方は以下の3つが挙げられます。
- 指で触れる
- 酸(酢)をかける
- 顕微鏡で見る
指で触れる
指で触った際に、形が崩れず繊維状のままであれば、アスベストです。ロックウールは粉々に砕け、グラスウールの場合は、ガラス繊維が指に当たるため、チクチクした感触があります。このように、指で触るとある程度見分けることができますが、アスベストの粉じんを吸い込んでしまうと健康被害につながるおそれがあるため、触れる際は十分な注意が必要です。
酸(酢)をかける
ロックウールは酸に弱い性質があるため、酢をかけると溶けます。一方、アスベストは酸に強いので、溶けることはありません。そのため、以前はこの性質を利用してアスベストの調査が行われていましたが、2006年にアスベスト含有の基準値が0.1%となり、目に見えない量が溶け残っていても「含有」と判断しなければならなくなったため、現在ではこの方法で判断することはできません。
顕微鏡で見る
アスベストの繊維の太さは、直径0.02〜1マイクロメートルです。一方、ロックウールは直径3~6マイクロメートル、グラスウールは4~9マイクロメートルであり、アスベストよりロックウール、グラスウールの方が太いため、顕微鏡で繊維の太さを確認して判断する方法もあります。
アスベストの見分け方
建材にアスベストが含まれているか確認する方法には、以下の8つが挙げられます。
- 垂れ下がっている綿がないかチェックする
- 建築物の着工年代
- 石綿(アスベスト)含有建材データベース
- 石綿含有建材の製造時期
- 建材メーカーへの資料確認・問い合わせ
- アスベストマークの確認
- 過去のアスベスト事前調査結果
- アスベスト分析
垂れ下がっている綿がないかチェックする
建材に混ぜ込まれたアスベストは、目視での判断が困難です。しかし、天井や壁の防火・耐火、吸音などを目的として使われていた吹き付けアスベストは、表面に露出しているため、目視で確認できることがあります。天井や梁から綿状の物が垂れ下がっている場合、吹き付けアスベストである可能性が高いです。
建築物の着工年代
日本では、2006年9月以降、アスベスト及び関連製品の製造・販売が禁止されました。そのため、登記事項証明書や建築確認済証などで建築物の着工日がこの日以降であることが確認できた場合、アスベスト無しと証明できます。ただし、ガスケット、グランドパッキンは確認する着工日が異なるため、注意が必要です。
石綿(アスベスト)含有建材データベース
国土交通省・経済産業省が運営する「石綿(アスベスト)含有建材データベース」にアクセスし、建材名や商品名を入力・検索することで、アスベストの有無を調べることができます。ただし、すでに廃業している、メーカーの確認がとれていないなどの理由で掲載されていない建材もあります。
石綿含有建材の製造時期
建材の製造年代が分かれば、アスベストを含む建材の製造時期と照らし合わせて有無を推定できます。ただし、製造・使用時期に当てはまっていても、全ての建材にアスベストが使われていたわけではないため、完全な判断は難しいと言えるでしょう。
建築資材 |
製造・使用時期 |
吹き付け材 |
1989年まで |
断熱材 |
1991年まで |
保温材 |
1987年まで |
耐火被覆板 |
1983年まで |
ボード類・シート類・仕上げ塗材など |
2005年まで |
建材メーカーへの資料確認・問い合わせ
設計図などから建材の商品名やロット番号が分かる場合、建材メーカーに直接問い合わせてアスベストの有無を確認できます。
アスベストマークの確認
建材のアスベスト含有の識別を容易にする目的で、1989年7月から生産業者は自主的にアスベストマーク「a」を押印するようになりました。そのため、アスベストマークが押印されている建材には、アスベストが含まれています。ただし、マークは全てのアスベスト含有建材に押印されていません。マークがなければ、アスベストが含まれていないわけではないため、注意が必要です。
過去のアスベスト事前調査結果
過去にアスベストの事前調査をしていた場合、その調査結果からアスベストの有無を判断することができます。ただし、事前調査を行った後に改造や補修した場合は、それらの記録も合わせて確認が必要です。また、法改正により、規制対象となるアスベストの種類の追加や、規定基準の変更があったため、過去に調査を行っていても現在の規定をクリアできていない可能性があります。
アスベスト分析
アスベスト無しと証明できる方法のひとつが、アスベスト分析です。建材を採取して、専門の機関へ送付し分析を行います。これまでの方法でアスベストの有無が判断できなかった場合や、確実に証明したい場合におすすめの方法です。
分析の費用は約2~3万円で、約1~2週間程度で結果が出ます。建材を採取する際は、手袋をはめて防塵マスクを着け、粉じんの飛散・吸入に十分な注意を払いましょう。採取する建材が高い位置にある、飛散・吸入のリスクが高い場合は、無理をせず採取も専門家へ依頼してください。
アスベストの見分け方は複雑!業者に依頼しよう
アスベストは非常に細かい繊維で肉眼では見えないため、目視で確認することはできません。また、ロックウールやグラスウールなど見た目が非常に似た建築素材も存在します。
これらと見分けたり、含有の有無を確認したりする方法には、手で触れる、酢をかける、建造物の着工日や過去のアスベストマークを確認するなどが挙げられます。しかし、確実な判断材料にならなかったり、粉じんを吸い込んだりするリスクがあるため、アスベストの分析・調査は専門業者に依頼しましょう。